コロナ禍のドレスデン爆撃76周年はバーチャルで”人間の鎖”

ドレスデン聖母教会のバーチャル版「人間の鎖」 ドイツ生活

2月13日、ドイツのドレスデン各地でドレスデン爆撃76周年の追悼が行われました。

第二次世界大戦終盤の1945年2月13日から2月15日にわたり、ドレスデンは連合国軍(イギリス軍、アメリカ軍)によって無差別爆撃を受けました。この爆撃によって、街の85パーセントが破壊され、2万5千人の命が失われました。

当時は「百塔の都」ともよばれ、歴史的に貴重な建築物の多かったドレスデンの美しい街の大半が破壊されたのです。

毎年2月13日になると、ドレスデンでは式典が行われ多くの人々が集まり追悼するのですが、今年2021年は新型コロナの影響で式典や追悼行事が大幅に縮小されました。

ドレスデンは毎年この日には、暴力・人種差別の反対、また平和を祈願して「人間の鎖(Menschenkette)」をつくる恒例行事があります。ドレスデン中心街とエルベ川にかかる橋を人々が手をつなぎ、長い鎖となるのです。

しかし今年はいつもとは違った「人間の鎖(Menschenkette)」になっていました。

スポンサーリンク

「人間の鎖」は極右デモを阻止するための市民による抵抗がはじまり

2011年の「人間の鎖」 Photo by Derbrauni

2月13日は、ドレスデン爆撃の追悼行事を利用して、大規模なネオナチ/極右集団のデモが行われます。他国からの空襲を理由にナチスの犯罪性を否定し、虐殺を正当化するデモ隊で、警察や反対勢力との衝突でしばしば暴動となります。

「こっちもやられたのだから、ナチのやったことは罪じゃない」という無茶苦茶な主張で追悼の日を利用された市民はたまったものじゃありません。

そこで、2010年に市民団体が「平和的な抗議運動でネオナチのデモ行進を阻止しよう」と呼びかけたのが、この「人間の鎖」の始まりです。

現在ではデモ行進の阻止だけでなく、ドレスデン爆撃の追悼、暴力・人種差別の反対、また世界平和を祈願するための恒例行事となっています。

今年はバーチャルで「人間の鎖」を投影

ドレスデン聖母教会のバーチャル版「人間の鎖」

コロナの影響でロックダウン中の今年は人々が手をつなぐ事が不可能となってしまったため、「Virtuelle Menschenkette(バーチャルの人間の鎖)」が実施されました。

事前に希望者がオンライン上に自分の写真をアップロードすることができ、2月13日に、ドレスデン市内の各所で、その多くの参加者の写真をプロジェクターで投影するのです。

聖母教会をはじめ、シナゴーグ(ユダヤ教会)、聖十字架教会、市庁舎などの外壁に、18:00~18:10、その後も1時間ごとに10分間、22:10までバーチャル版「人間の鎖」が投影されました。

私は18:00、聖母教会で見ましたが、音楽もスピーチも演出もないまま、鐘の音のみ鳴り響き、手をつなぐように腕を広げて撮られた人々の写真がただ次々に映し出されるというとても慎ましいものでした。

爆撃後のドレスデン聖母教会 Photo by Hiekel, Matthias
再建後のドレスデン聖母教会

ドレスデン聖母教会は爆撃によって一部の壁を除いて、その形がなくなるほど破壊されてしまいました。その後長い間、瓦礫のまま放置されていましたが、各国の支援もあって2004年に再建を果たしました。それからはドレスデンの復興のシンボルとされています。

タイトルとURLをコピーしました